映画「女神の見えざる手」(Miss Sloane)

f:id:jasminblog:20201124073545j:plain

(By official account @MissSloaneMovie)

 

あなたの洞察力が試される

繰り返す日常のなかで、新しい知見を得たり時代の流れを察知するには、日頃から様々な情報に触れておくことが必要不可欠。ときに映画は会話の潤滑油にもなるし、日常から離れて新しい視野を広げてくれる貴重な時間です。この映画は社会派サスペンスですが、着いていけないくらい伏線が散布されていて「自分の考えが覆される」ような体験が出来たのと、日本人にはあまり馴染みのないロビイストの活動が垣間見れて、個人的におすすめだったので書いてみようかなと。

まず最初にこのタイトルを見た時、アダム・スミスの“ 神の見えざる手”から連想して金融系の話かと思いきや、観ていくうちに法律の話が多いし、ロビー活動がうんぬんと話が進むのでロビイストの話だと察しました。ところで、ロビイストとは何かご存知でしょうか?個人的には恥ずかしながら、アメリカの選挙のときに海外ニュースでさらっと見たくらいで「何となく広報みたいな仕事」というイメージでしたが、アメリカでは政治家と交渉し政治を動かす交渉のスペシャリスト。セリフでもあるように「ロビイストは議員の海外旅行を手配できない」等と、ある程度制限があるなかで活動していて、法律を熟知している専門家でもあります。

そしてこのストーリーは、主人公のとったある行動が倫理規定に反するという理由で聴聞会にかけられ、社内弁護士と準備した上で「弁護人の助言によりアメリカ合衆国憲法修正第5条に基づき、答える事を拒否します」と答弁するシーンから始まります。その後のストーリー展開としては、凄腕ロビイストが銃規制強化法案を支持して大口顧客を敵に回しても、己の信念のために味方だって欺いて、「勝つ」ためには手段を厭わず、そのうち周りからだんだん仲間が離れていき…でも最後には大どんでん返しが!といった展開です。とにかくロビイストとして信念を貫くには、多数決で「勝ち」を取りにいくしかない。勝たないと意味がないんです。メディアを利用して多くの人々の賛同を得て、たとえ自分が犠牲になったとしても「法案を通す=勝つ」ことに意味がある。あまり話すとこれから観る人はつまらなくなるので、このくらいにして、伏線回収と感想を述べていくとします。

すべては繋がっている

ここからは最後まで観たという前提で話を進めていきます。

どこまでが仕事?信念?
どこまで信じていいの?
もしかしてあの時渡してた資料って?

と1回観ただけでは着いていけず、伏線回収するため2度見たのが正直なところです。それくらい2時間弱という枠の中に色々仕込まれていた映画で見応えあったし、観終わった後にこの洞察は当たってた!違ってた!と感想を語り合いたくなるような映画でした。

例えば、最後にかけての聴聞会のシーン。ジェーンが「今がその時なんです」と辞表を出しますが、これは予想的中。1番信頼している仲間がなぜわざわざ敵に回るのか?疑問で怪しいと思っていたのでやっぱりなと思った反面、スローンが会社を去る前にソクラテスの話のくだりで「話がしたい」とジェーンを呼び出した時点で、すでにこの計画は始まっていた!とは思ってもみない展開でした。そして、たまたま銃所持していた一般人がエズメの襲撃者を射撃して一命を取りとめたシーン。あの一般人も実はデュポンの手先では?と思ったのは私だけでしょうか?のちのち「ラッキーな出来事だった」と語っているので、これは単純に考え過ぎでした。ちなみに、デュポンと聞いて「戦時中、火薬の売買で財を成した会社」だったと記憶しているのですが、そうなると敵がデュポンという名前なのも納得です。さらに、スローンがジェーンにふと電話を掛けて「掛け間違えでは?」と返答するシーン。これが隠されたGOサインだったなんて…お見事でした。もろもろ私は色々なサインを見落としたり考え過ぎたりしましたが、勘が鋭い人だと、もっと前から結末を察していたかもしれませんね。

スローンがワーカーホリックで敵に回すと怖い女性だと思ったのが率直な感想ですが、一方で、自分が犠牲になっても、自分で自分の株を落とすような真似は決してしない賢い女性だなと。結局すべてはロビイストとして信念を貫くために彼女が予見していたことであり、振り出しのセリフがその全てを語っていた、といったところでしょうか。とにかく、これから観る人はどこまでが彼女の手の内なのか勘ぐりながら観てみてください!


映画『女神の見えざる手』 予告篇

女神の見えざる手(字幕版)

女神の見えざる手(字幕版)

  • 発売日: 2018/04/03
  • メディア: Prime Video